第144回(2007.05.22) 
PMO考(1)〜プロジェクト&プログラムオフィスの種類

◆PMOの時代の到来

戦略ノートでは、プロジェクトマネジメントオフィス(以下、PMO)の話題にはあまり触れてこなかった。別のメルマガがあって、そのすみわけを意識してきたためだ。

PMOマガジン(現在は、プロジェクト&イノベーション)

ただ、この1〜2年、プロジェクトマネジメントチームをPMO(正確にはプロジェクトオフィス)だといっているケースが増えてきたので、少し、触れてみたいと思う。

今回は初回ということで概念整理。


◆プロジェクトマネジメントオーナーシップ

PMOを議論する際に忘れることができないのが、

 ・プロジェクトマネジメントオーナーシップ

である。企業の中には、いろいろな業務のオーナーがいる。例えば、お金に関することであれば、会計業務のオーナーシップがある。通常は財務部門である。生産に関することであれば、製造部門がオーナーシップを持つ。販売であればマーケティング部門がオーナーシップを持つ。情報マネジメントに関するオーナーシップは情報システム部門が持つ。

オーナーシップとは、その企業における業務活動のルールを作ることのできる権限である。日本企業は本格的なガバナンスの導入がこれからなので、ちょっと分かりにくいもしれないが、これらのオーナーシップを分離しておくことが企業の健全さに繋がる。例えば、生産と販売のオーナーシップが「談合」してしまえば、販売価格の高い商品を顧客に提供することができ、結果として企業は競争力を失う。

そこで、プロジェクトマネジメントのオーナーシップはプロジェクトマネジメント活動に関するルールを作る権限である。PMOの究極的な役割は、プロジェクトマネジメントに対するオーナーシップを持つことである。


◆プロジェクトマネジメントオーナーシップのポイントはプロジェクトガバナンス

これは、プロセスを決めるとか、やり方を決めることだけを意味しない。プロジェクトマネジメントのルールの中で特に重要なものが2つある。ひとつは「プロジェクトガバナンス」に関するルールである。プロジェクトのライフサイクルを明確にし、各ライフサイクルにおいて、誰がどのような権限を持つのかを明確にすることである。もうひとつは、プロジェクト評価のルールである。戦略に応じてプロジェクトの価値指標を決める仕事である。価値はたとえばポートフォリオによって表現される。

今の日本の企業の状況はプロジェクトマネジメントに対するオーナーシップがないので、事業部門や財務部門、調達部門が都合よくやっているというのが現状である。


◆PMOの種類

PMOの種類と考える場合に、大きくわけると、プロジェクトマネジメントのオーナーシップを持つPMOとそうではないPMOに分けることができる。一般的にはオーナーシップを持つPMOをコーポレイトPMO(CPMO)、あるいは、エンタープライズPMO(EPMO)と呼ぶ。CPMOの最大のミッションは、ベストプラクティスを社内に展開することであり、そのために戦略を作っているといっても過言ではない。

オーナーシップを持たないPMOはさらにいくつかに分類することができる。まず、最初がいわゆるPMOである。これは、事業部、部門、地域などに対して、CPMOの策定したプロジェクトマネジメントの戦略、標準を展開する責任を持つ。戦略や標準の適用方法について、その展開のマスタープランを策定し、その実行を指揮する役割を負うことが多い。

PMOは戦略や標準の効果に対する責任を持つのが原則であるが、次に述べるPSOがないような場合など、体制によっては、オペレーションの管理などをするケースもある。また、ベストプラクティスの展開をツール化していくケースも多い。

さらに、CPMOが策定した標準について、オペレーショナルな監視をするPMOを設置するケースもある。これはPSO(Project Support Office)と呼ばれる。PSOは戦略や標準をオペレーションに展開するために、PMOと協力しながら、ツールやテンプレートを開発する。また、オペレーションの普及や改善に対して、責任を持つことになる。

上記以外に、プロジェクトオフィス(PO)という組織を置くことがある。プロジェクトオフィスは大規模なプロジェクトを対象とする場合と、複雑なプロジェクト(プログラム)を対象とする場合では、若干、役割が異なるが、基本的には、ミッションクリティカルなプロジェクトに対して、プロジェクトマネジメントを直接支援する目的で設置される。


◆戦略ノートのスコープ

戦略ノートで議論したいのは、主に、PSOやPOという、プロジェクトマネジメントに対して直接的な関係を持つオフィス機能である。それ以外については、PMOマガジン(現在は、「プロジェクト&イノベーション」に変わっています)で議論する。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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