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第211回(2010.04.30)
計画力について考える |
◆プロジェクトマネジャーが必要な3種類のスキル
プロジェクトマネジャーにはいろいろなスキルが必要である。先人の知恵を借り、大きく分けると、
(1)プロジェクトマネジメントのテクニカルスキル(PM技法)
(2)ヒューマンスキル(人間系スキル)
(3)コンセプチャルスキル(概念化スキル)
の3つに分けることができる。プロジェクトの規模が大きくなったり、あるいは、プロジェクトの複雑性・不確実性が増してくるにつれて、(2)や(3)のスキルの重要性が増してくると言われている。
このような話はプロジェクトマネジャーにとっては釈迦に説法かもしれないが、この議論の中で一つ盲点になっていることがある。それが今回の戦略ノートのテーマだ。
◆計画策定の前提
どのようなスキルかというと計画を作るスキルだ。
PMstyleでもそうだが、プロジェクトマネジメントの研修などの体系を見ていると、「プロジェクト計画」はテクニカルスキルとして位置づけられていることが多い。確かに、プロジェクトの計画を作るには、何を決めればよいかは専門的事項である。また、スケジュールを決めるPERTなどはテクニカルなスキルだ。あるいは、計画作業に不可欠な見積もり技術、品質計画など、ベースライン計画を作るスキルはテクニカルなスキルであることは間違いない。
さらにいえば、リスク計画においても、リスク識別、リスク分析などは技法として確立されたものがあり、テクニカルなスキルだといえる。このような認識で、計画スキルはテクニカルスキルであると考えられていると思われる。
ここで、考えたいことは、このような認識には、プロジェクトの計画は「段取り」であり、精緻に積み上げていくことによって、妥当なものが得られるという前提がある。
◆見落とされているもう一つの前提
この前提は半分は正しいが、半分は正しくない。「計画」というもののもう一つの側面を見落としている。それは、「目標」である。つまり、ある意味で見積もりとは関係なしに、いつまでに何を「したい」のかを示す「意思」であり、計画とは意思決定なのだ。
ある意味と書いたのは、たとえば、こういうことだ。過去の実績をベースにした見積もりでは、10時間かかる仕事が2つあったとする。この場合、計画をするというのは
10+10 → 20
ではないということなのだ(PERT的な意味でばらつきがあるということではない)。
だからといって、
10+10 → 11
とするのでは非現実的である。
◆計画の本質
そこで、自分も含めたステークホルダがどれだけの工数でやって欲しいのかと、実績的にはどのくらいでできるのかをうまくバランスする必要がある。つまり、
□+◇→ 15
↓
7+8=15
というように、現実とのバランスを取りながら目標を「決める」。そして、10を□や◇を具体的な方法を考えながら、副目標として具体的な数字をきめていく。これが計画の本質である。
加えていえば、このように考えるとPERT的なばらつきではなく、目標が達成できない可能性がある。これがリスクを考える理由であり、このリスクを管理するのがリスクマネジメントである。「10+10→20」でもできないかもしれないのを管理する
のがリスクマネジメントではない。
◆計画はコンセプチャルスキルに本質がある
さて、「上のように計画する」という仕事を考えると、計画というのはテクニカルスキルだとは言えないことをお分かり頂けると思う。本質的に、課題設定や問題解決と並ぶ、コンセプチャルスキルなのだ。にも関わらず、テクニカルスキルだけの計画力しか持っていないプロジェクトマネジャーが多い。これが冒頭に盲点だといった点である。
本来、計画をするスキルというのは、テクニカルスキルではなく、コンセプチャルスキルであり、見積もりやPERT、あるいは業務スキルはそれを補完するテクニカルなスキルである。
そういった認識が必要である。真の計画力を身につけよう。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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