第11回(2005.11.09) 
これは使えるぞ!PMBOK3(11):コミュニケーション
 

◆各知識エリアで変更されたプロセス(9)
前回に引き続き、知識エリアの観点からの変更点について、特に変更されたプロセスについて記述します。

ここでは、
△:立ち上げプロセス群
○:計画プロセス群
◎:実行プロセス群
●:監視コントロール・プロセス群
▲:終結プロセス群
でプロセス群を表現しています。

■プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
プロジェクト・コミュニケーション・マネジメントでは、プロジェクト情報の生成、収集、配布、保管、検索、廃棄をタイムリー、適切かつ確実に行うために必要なプロセスからなっています。

PMBOK3のコミュニケーション知識エリアには、計画プロセス群に「コミュニケーション計画」、実行プロセス群に「情報配布」、監視コントロール・プロセス群に「実績報告」、「ステークホルダー・マネジメント」があります。

コミュニケーション知識エリアは他の知識エリア(例えば、リスク)に比べて、プロセス数やそのインプット、アウトプット、ツールと技法があまり具体化されていないため、プアな知識エリアと言われています。PMBOK3では「ステークホルダー・マネジメント」が追加され、また他のプロセスも少し詳細化されてきました。

○「コミュニケーション計画」
「コミュニケーション計画」では、ステークホルダーの情報とコミュニケーションに関するニーズを特定し、コミュニケーション・マネジメント計画書を作成します。

2000ではステークホルダーを識別し、ニーズを満たすためのステークホルダー分析が 「コミュニケーション計画」のツールと技法でしたが、PMBOK3では、コミュニケーションに対する要求事項の分析となり、分析の範囲が広がっています。

コミュニケーションの要求事項の特定に必要な情報として、
・組織図
・プロジェクト組織とステークホルダーとの責任関係
・プロジェクトにかかわる専門分野、部門、特殊技能
・プロジェクトへの参加者数、所在地などのロジスティクスに関する事項
・内部の情報ニーズ(例:組織内のコミュニケーション)
・外部の情報ニーズ(例:メディアとのコミュニケーション)
・ステークホルダー情報

などがあげられています。

また、2000では、コミュニケーション技術がインプットでしたが、PMBOK3ではツールと技法に含まれるようになりました。やはり、コミュニケーション技術はツールと技法の方が、しっくりきますよね。

◎「情報配布」
「情報配布」では、ステークホルダーに対して、コミュニケーション・マネジメント計画書に従って、必要な情報をタイムリーに提供します。

2000では、ツールと技法に教訓プロセスが追加されています。これは、「情報配布」のアウトプットである組織のプロセス資産に追加する教訓をまとめる場を実行プロセスで行いましょうという意味で追加されているようです。

●「実績報告」
「実績報告」では、パフォーマンス情報を収集し、配布しますが、これには、状況報告、進捗測定、および予測を含んでいます。

2000では「実績報告」のインプットとして、作業結果という総称的なものでしたが、PMBOK3では、具体的な次のようなインプットになっています。

・作業パフォーマンス情報
・パフォーマンス測定結果
・完成時予測値
・品質管理測定結果
・要素成果物

また、2000ではインプットとしてプロジェクト計画書がありましたが、PMBOK3では、プロジェクトマネジメント計画書・パフォーマンス測定のベースライン、とより具体的な説明になっています。

2000では、他のプロジェクト記録がありましたが、PMBOK3では削除され、承認済み変更要求が追加されています。

●「ステークホルダー・マネジメント」
「ステークホルダー・マネジメント」は、PMBOK3で追加された新しいプロセスです。ここでは、ステークホルダーのニーズを満たし、ステークホルダーとの課題を解決するためにコミュニケーションをマネジメントします。

ステークホルダーとの未解決の課題が原因でプロジェクトに影響を受けることを減らし、相乗効果のある働きを促進する監視コントロール・プロセス群のプロセスで、プロジェクト・マネジャーがステークホルダー・マネジメントの責任を持ちます。

ツールと技法としてコミュニケーション手段が挙げられていますが、顔をつきあわせた会議が最も効果的な方法と書いています。
もう一つのツールと技法である課題ログは、課題の解決を文書化し監視するためのツールであり、解決可能な方法を明確に記述し、責任者を決め、課題解決の予定日を設定するものです。


◆コミュニケーション計画について
くしくも、本日はコミュニケーションマネジメント研修の第1日目です。このセミナーは、これでもかとエクスサイズ、ロールプレイ、グループ演習を行い、コミュニケーションマネジメントの重要性を体験し、そしてコミュニケーションマネジメントの知識を習得していただくセミナーです。

いわゆるコミュニケーションスキルのセミナーとは異なり、これからPMBOKでもますます重要視されるであろうコミュニケーションマネジメントについて、計画し、実践するためのセミナーです。

詳細はこちら

◆お奨め図書
もちろん、PMBOK第3版の日本語版です
 Project Management Instytute
"A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.2)
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