第37回(2007.04.06)
コスト・ベースライン(3)
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 

◆コスト・ベースライン
前回は、コスト知識エリアのコストの予算化プロセスのコスト・ベースラインについて取り上げました。

第36回 コストベースライン(2)

今回は、どのようにコスト・ベースラインを作成するかを取り上げます。

前回でも書きましたが、コスト・ベースライン(時間軸ベースの予算)を作成するためには、

・各アクティビティにおけるコスト見積
・WBS
・プロジェクト・スケジュール

この3つの情報が必要です。

一言で言えば、コスト・ベースラインは予算の時間軸での展開ですので、

・各アクティビティを実行するのにどれくらいのコストがかかるのか
・各アクティビティがいつ開始されいつ終了する予定なのか

という情報から、コストが発生する時期に割り当てていき、コスト・ベースラインを作成します。

その手順として、まず、コスト・ベースラインのタイプを決めます。
タイプは大きく2つに分かれ、1つめはプロジェクトの支出に焦点をあてて、プロジェクト予算を管理するためにコスト・ベースラインを作成する場合と、もう1つは、キャッシュ・フローを管理するためにコスト・ベースラインを作成する場合です。

日本ではあまり聞いたことがありませんが、プロジェクト・ファイナンスという考え方があります。
それは大型プロジェクトなどで資金が不足する場合に資金調達をする方法で、担保はプロジェクトの資産のみ、責任範囲はプロジェクトに限定、返済源資はプロジェクトのキャッシュフローに限定されるというものです。
このため、融資を行う際には対象プロジェクトの収益性、リスク分析を厳密に行い、プロジェクトのリスクを融資する銀行が共有するというものです。このように資金調達した場合は、キャッシュ・イン・フローとキャッシュ・アウト・プローを管理するために後者のコスト・ベースラインを作成することが必要になってきます。

が、通常は前者のプロジェクト予算を管理するためにコスト・ベースラインを作成する場合がほとんどです。この場合、プロジェクトの予算(支出)として何を管理するかが問題になり、
・プロジェクト・メンバーの給料
・間接費
・設備・材料などの支払
・請負業者への支払
・運送費など
などを含むのか含まないのかを決めていきます。

次に、コスト見積りとコストの発生タイミングの関係の基準を決めることが必要になってきます。キャッシュ・フローを管理する場合は、プロジェクトのどのイベントでどのコスト項目の支払が発生する要因となるかとその支払の間隔を確認し、支払ごとにコスト・ベースラインを作成します。
プロジェクト予算を管理する場合は、コストの発生タイミングでコスト・ベースラインを作成します。

両者ともに、1日単位でのコスト・ベースラインの作成というのは困難かつメリットはありませんので、1週間、旬、月のどの単位でコストの発生タイミングを判断するかを決めます。例えば、月単位にコスト・ベースラインを作成するとします。
WBSの中に、基本設計というアクティビティがあり、そのアクティビティのコスト見積りが100万円であったとします。
この作業スケジュールは4/1〜5/31までであり、平均して作業が進むのであれば、4月に50万、5月に50万とし、すべてのアクティビティについてどの期間に作業が行われるか、どの割合で何月にコストが発生するかを判断して、すべてを合計すれば、コスト・ベースラインを作成することができます。

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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。

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