|
|
|
1991年に「戦略プロフェッショナル─競争逆転のドラマ」という本が出版され、ビジネスマンの間で大ベストセラーになりました。著者は三枝匡さん、ボスコンの出身で、出版当時は独立されていましたが、今は、ミスミグループの会長をされている方です。
当時はまだ、経営企画など、一部の経営の専門職を除くと多くのビジネスマンは戦略という言葉のイメージを明確に持っていなかったように思います。戦略プロフェッショナルのヒットを契機に戦略マネジメントや戦略思考が徐々にビジネスマンの間に浸透してきたような印象があります。
それから20年になりますが、戦略の議論は当時とはかなり変わってきています。変化の契機になたのは、2002年に出版された「Execution:
The Discipline of Getting Things Done」(邦訳「経営は実行」)です。
著者のラリー・ボシディは、GEで人材マネジメントについてジャック・ウェルチの薫陶を直接受けた一人であり、GEからアライドシグナルへ転籍した後には、「最も尊敬されるCEO」の称号を賜り、アメリカ産業界でも屈指の「名コーチ」として名高い人物ですが、この本が戦略マネジメントに与えた影響はとても大きなものでした。
この本の登場によって、目から鱗が落ちたように、戦略マネジメントの焦点が、策定することから、実行することに移りました。もちろん、戦略の策定が軽んじられることはありませんが、どんなに優れた戦略であっても、絵に描いた餅では仕方ないと考えられるようになってきたわけです。
これとともに、戦略マネジメントの主役も、経営トップや経営スタッフから、「現場」に変わりつつあります。
日本の組織は元来、そのような性質を持っています。現場力に対する深い知見で著名な遠藤功先生がベストセラー「現場力を鍛える」の中で、現場の戦略調整の機能を指摘されています。つまり、トップダウンで降りてきた戦略を現場が実行するに当たって、現実に併せて調整していくことが日本の現場力の強さの一因だと指摘され、これは戦略実行力のポテンシャルの高さの証明でもあると指摘されています。
また、経営目標を戦略に合わせて多元的に捉えて実現していくためのツールであるバランススコアカードが日本の企業では有効に活用されているのも、日本組織の戦略実行力のポテンシャルを示すものだと想われます。
一方で現場に目を向けますと、「アクティブ・ノンアクション」の嵐にさらされています。改めていうまでもありませんが、いくら高い品質の商品を作ろうと、いくら顧客が満足しようと、経営的な成果にならない限り、価値がありませんし、その成果が自分のところに還元されることもありません。ビジネスでは、企業、あるいは経営という仕組みを通じて、自分の働きの成果が自分に戻ってきて初めてアクションといえます。アクティブ・ノンアクションは、忙しく働いているのにその成果が経営的な成果にならない状態を意味しています。
経営的な成果とは何か、それは、経営方針や戦略への貢献度に他なりません。
現場がアクティブノン・アクションに陥らないためにはどうればよいか。その答えは、なぜ、アクティブ・ノンアクションに陥るかを考えてみれば分かります。現場が十分に経営の意図をくみ取れておらず、無駄なことをしているからです。プロジェクトのような大きな活動に限らず、どんな小さな活動でも経営の意図を反映することはできます。20年前ならともかく、このご時世に経営方針や戦略を明確にしていない企業はありません。
問題はそれが全社に十分に浸透していないことです。経営の問題として、コミュニケーションの問題があります。多くの企業では、現場が理解し、納得するまで対話が行われているといえません。だからと言って、経営トップのやり方が悪いのだという理屈は通りません。それは現実として受け止め、その中で、現場は経営の意図を読み取り、経営の意図にそぐうような活動をしていくことが求められます。そして、これが唯一の現場ができるアクティブ・ノンアクションの回避の方法でもあります。
ここでポイントになるのは、戦略の実行というのはどういう形で行われるかです。大きく分けると2つあります。一つは、オペレーションです。もう一つはプログラム/プロジェクトです。
つまり、現場のリーダーはオペレーションのマネジメントと行う管理者であったり、プログラム/プロジェクトのマネジメントを行うマネジャーであったりします。
このうち、戦略実行という意味で特に重要な役割を果たすのは、プログラム/プロェクトのマネジャーです。プログラム/プロジェクトは戦略実現のために必要な新規要素(商品やサービス、プロセス)を創り出す役割を担うもので、その成否が戦略実行の鍵を握っているからです。
このように考えてみると、プログラム/プロジェクトのマネジャーの仕事は、戦略実行そのものということになります。一人一人が、戦略実行のプロフェッショナルになることが求めているわけです。
このメールマガジンは、現場のさまざまなレベルのリーダー、スタッフが「戦略実行プロフェッショナル」になる支援をしたいと考えています。
本誌が、プログラムマネジャー、プロジェクトスポンサー、プロジェクトマネジャーを「戦略実行リーダー」に、PMOを戦略的PMOに変え、それぞれの立場で戦略実行プロフェッショナルとしてご活躍されることを願ってやみません。
|
|
|
|
|
|